「広く旅をし、方々を遍歴したものだけが、知識という名の富を有している。」(詩の神・オーディン)
平成日本紀行(208) 芦原 「芦原温泉」 .
日帰り温泉施設 「セントピアあわら」
えちぜん鉄道三国芦原線の「あわら湯のまち駅」
九頭竜川の清流を渡り、今夜の泊まり宿「芦原温泉」へ急いだ。
普通、温泉場の立地といえば山懐、河川際、湖の畔、海辺と何かしら自然とマッチした、それなりの雰囲気を持った環境に佇んでいるのが普通のように思っていた。
芦原温泉は、そんな意識とは別に平凡な田畑に囲まれた平地に在った。
後で知ったのだが、北陸・芦原温泉は明治16年、農民が灌漑用の井戸を掘っていたところ温泉がいきなり湧き出したのがはじまりというから、さもありなんであった。
今では、北陸屈指の名湯として知られるようになり、人気も誇っているのである。
先刻、観光案内所より紹介をして頂いた宿屋へ向かう、駅前のT字形の突き当たりにその旅館はあった。
駅は華やかな温泉街のわりには意外と、こじんまりしてて「あわら湯のまち駅」とあった。
鉄道は北陸本線ではなく、「えちぜん鉄道」という第三セクター方式の鉄道会社であった。
2キロメートル東方に、本線である北陸本線の「芦原温泉駅」があるが、地域として金津町に属するようである。
旅館は紹介によって、便利な駅前にある政府指定の一流旅館のはずであったが、印象としては極めてゾンザイな感じが最後まで拭えなかった。
その某旅館の顛末をしたためておく・・! 。
先ず、玄関で訪問の呼声を掛けたが、返事が無くなかなか応対に出てこない。
車を置くところへ案内されたが狭くてやっとのところ。
案内された建物は継ぎ足しの迷路のような部屋組であり、部屋係り女性の御客への対応も扱いも気だるそうで、迷惑そうでゾンザイそのものであった。
そして、館内の様子からも泊り客が居るのか、居ないのかシーンと静まりかえっている。
何かしら、否~な予感がした。
何はともあれ、何時ものように待望の温泉浴室を目指した。
人っ子一人居ない浴室、大きな湯船には湯がトウトウと流れ込み、大いに期待したところまでは良かったが、湯を浴びると、これがまた熱い・・!!、
我慢して静かに浸かると数秒も浸かってられない程の熱さである。
元々、温湯(ぬるゆ)の好きな小生にとっては、到底我慢がならない・・!。
気が付くと外風呂も有るようなので、仕方なく露天風呂へ向かった。 ここなら何とか入れるだろうと思ったが、これが又甘かった、こちらも同様でアッチッチ・・!!、だめだ、こりゃ・・!!。
結局、掛け湯と洗身のみで間に合わせ、女将にこの事を話して善処置をするように申し入れた。
食事の後(食事に関しても不満充分であったがここでは省略)、就寝前に再び入湯に出向いたが、いっこうに以前と全く変わりなく、そして次の朝も入湯に出向いたが、善処された形跡は無く、昨夕と全くの変わりはなかった。
帰り際、旅館の女将に厭味たっぷり言ってやったが、なにやら涼しい顔をしていたようにも思い、後はソソクサトと逃げるように宿舎を出奔した。
芦原温泉の善し悪しを全く味わうことなく、後味悪く温泉場を後にする始末であった。
芦原温泉は、北陸、福井屈指の温泉街として「関西の奥座敷」とも呼ばれ、昔から多くの文客にも愛されてきたようで、温泉医療師がすすめる名湯百選にも選ばれているという。
この名湯を堪能すべく期待を持って、一流旅館を紹介していただいたのに・・!。
この旅館の対応は、お客のサービス以前の問題で、全く期待はずれであり、終いには腹が立って仕方が無かった。
思えば、こちらの芦原温泉でも、昨年(2004年)に発生した温泉偽装問題が発覚している。温泉の利用表示に問題がある旅館および源泉の無断開発の疑いがある旅館が、複数軒あったとして、ニュースで大きく取り上げられた。
ひょっとしたら当の旅館も温泉偽装の関わった宿では・・?、と疑いたくなるほどである。
その後、あわら市では独自の温泉表示に関する基準を設けたようであるが・・!。
これが政府指定の一流旅館の顛末であり、不満タラタラの芦原温泉、否、温泉宿であった。
次回は、「東尋坊」