是より東北沿岸部(太平洋岸)の「温泉と観光」を巡ります。
日本周遊紀行;温泉と観光(30)風間浦 「下風呂温泉」
下風呂温泉の大湯
大湯の湯船
先ずは本州北の果ての温泉「下風呂温泉」から・・、
大間に到着した頃には、すっかり闇に包まれていた。 これからの目的地は評判の「下風呂温泉」である。
本州最北端の村・風間浦の海道沿いである国道279号を行く。
暫くすると、いささか眩しいくらいのネオンの歓迎灯が光っている。
路地へ入ると田舎の小さな温泉街の風情があった。
共同浴場は二軒、大湯と新湯があるようだが、その「大湯」へ向かった。 300円の銭湯を払ってイザ湯船へ。
硫黄の香りがプンプンする、お湯は緑白色、身体にジンワリと効きそうだ。
湯船と床は総ヒバ・・?(この地から内陸部に、明日向かう予定の薬研地区はヒバの原生林で有名)造りで感触が実に気持ちが良い。
洗い場で若い衆と御老体が盛んに会話を交わしていたが本場の津軽弁であろう、東北出身(いわき)の小生でもチンプンカンプンである。
湯上りに何とはなしに、おしゃべり好きそうな番台の女将が『この大湯はNHKで放送している、「ふだんぎの温泉」で、第一回目に放送された記念の湯だよ、この前も民放TV局が来て色々撮って行ったよ・・、』と津軽弁で話してくれる。
小生も何度か、この放送は見ている。
吉 幾三のテーマ曲にのって地域密着、全国各地の情緒たっぷりの温泉を紹介しているのである。
下風呂温泉は下北半島の「まさかり形」の北側にあり、津軽海峡に面している。
対岸は北海道の函館と恵山で、特に恵山を眺めるには絶好の場所でもある。
井上靖は昭和33年、この温泉地で小説「海峡」を執筆し、作品の舞台にもなっていて、当地・長谷旅館はその「海峡」の宿として知られる。
また、水上勉「飢餓海峡」の舞台にもなり、この作品は映画化もされている。
それにしても温泉場の名称が『風呂』と付くのが面白い。
「下風呂」が在るのだから上風呂という名も在りそうだが、そうではないらしい。
温泉名は、この地域のことをアイヌ語で岩(シュマ)臭い(フラ)が語源とされ、「シュマフラ」と言っていたことに由来するという。
尤も、風呂そのものの語源が、「窟」(いわや)や「岩室」(いわむろ)の意味を持つ室(むろ)が転じたという説があるという。
又、抹茶を点てる際に使う釜の「風炉」から転じたという説もあるが。
序ながら「風呂」について・・、
昔の人の「風呂」という概念は釜に湯を沸かし、その蒸気を浴槽内に送り込み、熱い水蒸気により身体の垢を浮き上がらせてから、ぬるま湯や冷水で身体を洗うといったもので、現在に言う、蒸し風呂・サウナのようなもだった。
江戸期初期の頃に「戸棚風呂」といって下半身を湯に浸し、上半身を蒸気で蒸すという。 お風呂と湯浴をミックスした仕組みになっていたらしい、云わば、半身浴のようなものだったという。
現代のような、全身を湯が満たされた浴槽に入るようになったのは江戸期以降といわれて、その頃江戸に湯屋が開業し、風俗絵にもなっている。
下風呂温泉は室町時代からの歴史をもつといわれ、室町期の地図にも「湯本」との記載がされているという。
江戸初期の1656年には、南部藩藩主・南部重信が入湯しているとも云われる。
近世はニシン漁師の湯治場として栄え、現在はイカ漁の行われる漁港として温泉街が成立している。
温泉は、大畑と大間の中間あたりの海岸にあり、温泉ホテル、宿、民宿が立ち並んでいるが鄙びた温泉場という印象で、チョットした温泉街という雰囲気では本州最北端であろう。
泉質は、含塩化土類硫化水素泉と、今で言う硫黄泉であろう室町時代から刀傷や槍傷に薬効のある湯治場として知られたらしい。
街には二つの共同浴場があり、「大湯」は硫黄分の多い白濁した高温の湯、通称男湯、そして「新湯」は幾分柔らかめで食塩が多く透明の湯らしい。
切り傷、打撲傷、神経痛、婦人病、皮膚病などに効能がるといい、源泉は66度であると。
湯上りに、地元の寿司屋で生ビールと地元特産の海鮮丼をいただき、大満足であった。
夜もトップリと更けてきて、今夜は大畑漁港の海辺で、マイカー宿とする。
次回は下北・「薬研温泉」
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